■クリエイターのための3D立体コンテンツ講座

第1回.3Dをはじめよう第2回.3Dをつくってみよう第3回.3D立体写真にチャレンジ第4回.3Dお役立ち情報

第1回.3Dをはじめよう

 突然ですが、あなたは3Dの立体映像を見たことがありますか?
きっと多くの方がYesと答えるでしょう。遊園地などのイベントスポットや赤青メガネで見る立体写真、最近では映画館でも3Dの立体映画が上映されるようになってきました。では、こう聞かれたらどうでしょう。「あなたは3Dの立体映像を作った事がありますか?」この質問にYesと答える方はほとんどいないでしょう。とはいえ、国内ではプロの映像クリエイターや写真家でも3D立体の案件はまだまだ少なく、特に経験がなくても今のところ仕事で困る事はありません。
 しかし、その状況が変わりつつあります。ハリウッド映画の3D化に伴う3D上映館の増加、3Dテレビの発表、3D対応携帯電話の発売など、2008年頃から3D業界が活発になってきており、アニメ・CM・PV・VP・写真などの映像コンテンツやゲームコンテンツの3D立体映像を前提とした制作案件が今後増えてくると予想されます。
 3D立体映像の制作は原理さえ理解すれば簡単に始められます。しかし、最適な立体感を追求したり、立体ならではの表現をするには各シーンに適した制作技術やノウハウが必要です。さまざまな3D制作業務に備えてのノウハウ蓄積やR&D用途、又は既に進行中の3D制作業務の効率化と3D立体品質の向上に、本3D立体視聴キットは役に立ちますが、本講座では3D立体視の仕組みとよく使われている視聴方法やハード、立体コンテンツの作り方と注意点等の簡単な解説をしたいと思います。そしてその他の役に立つソフトやコンテンツの紹介等々、これから3D立体コンテンツを始めるクリエイターが知っておくべき情報を厳選してお届けします。
 前置きが長くなりましたが、ところで3Dってどうやって作れば良いのでしょう?答えは非常に簡単で、CGでも実写でも、映像でも写真でも、基本的には2台のカメラで撮影して作ります。3D立体視は様々な方式がありますが、これは二眼視差方式と呼ばれているもので、人間の右眼と左眼それぞれから見た時の映像を表示することで、立体感を感じる事ができるという原理です。3D映画や3Dテレビ、プロジェクターを使った3DVPなどに最もよく使われている方式で、本講座でもこの方式をとりあげます。3Dの立体視には他にも多眼視差式やホログラフィがあります。
 次回からは具体的な制作方法をみていきましょう。3ds maxを使用して実際に3D立体映像を作ってみます。
(2009.3.6)

第2回.3Dをつくってみよう

 それでは、実際に3D立体映像を作っていきます。今回はAutodesk社の3ds maxというCGソフトを使用して、アニメーションにする前の静止画像での、立体感の作り込みの方法を見てみます。他のソフトや実写撮影の時も、基本的な考え方は同じなので参考にしてみて下さい。 右目から見た時の絵と、左目から見た時の絵をそれぞれ用意して、3D立体視聴キットで視聴してみます。
§1."視差"を付けると立体感が表現できる
 自分の指を目の前に出して、片目を交互に閉じてみて下さい。右目と左目では、指やその後ろにある物の見え方(見える面や角度)が違っていると思います。 この、両目で見た時の見え方の違いを"視差"と呼び、二眼視差方式ではこの"視差"の付け方で立体感を表現します。
左目からの見え方
̍手の甲がよく見えて、後ろにある花は左側に見える。
右目からの見え方
̍手の甲はあまり見えず、後ろにある花は右側に見える。
§2.やってみよう
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 今回はこのシーンを3D立体にしてみます。3ds max用フリープラグインのGREEBLEとスカイライトを使用して作成したシンプルなシーンです。
NbNŊg
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2-1.

 シーンには1つのターゲットカメラがあります。このカメラをCameraCENTERと名付けます。 トップビューから見た座標はX:0.0m Y:-3.0m Z:0.25mで、この位置からターゲット X:0m Y:0m Z:0mを見ています。
2-2.

 CameraCENTERをコピーして、左目用と右目用の2つのターゲットカメラを新たに作成します。 左目用のカメラをCameraLEFT、右目用のカメラをCameraRIGHTと名付けます。 人間の目と目の間の距離(瞳孔間距離)は6.5cm程度ですので、 CameraLEFTをCameraCENTERの3.25cm左に、 CameraRIGHTをCameraCENTERの3.25cm右に配置します。 ターゲットの位置はCameraCENTERと同様にワールドの原点(X:0 Y:0 Z:0)にします。

以上で設定は終わりです。レンダリングしましょう。
2-3.



 2台のカメラそれぞれをビューポートから選び、2度レンダリングします。 ここでは左目用カメラの画像をtestL.bmp、右目用カメラの画像をtestR.bmpというファイル名で保存しました。

2つの画像は似ていますが、重ねてみると視差(左右それぞれカメラで見た時の視界の差)が付いているのが分かると思います。
2-4.


 3D立体で見てみましょう。今回は、本製品(3D立体視聴キット)を使ってみます。 3D立体を見るには、赤青メガネ(アナグリフ方式)や3D対応モニター、3D対応ヘッドマウントディスプレイなど、 様々な方法がありますが、本製品はシャッター方式でとても簡単に、安価での3D立体視聴が可能です。

OLYMPUS POWER3Dメディヤプレーヤーを起動し、 ペアファイル選択モードにして「L Select」ボタンを押します。ファイル選択ダイアログが表示されたら、保存したtestL.bmpを選択します。 プレーヤーが自動でtestR.bmpを見つけますので「はい」を押します。
2-5. NbNŊg
NbNŊg

 再生ボタンを押すと、3D立体で表示されます。3Dメガネをかけて視聴して下さい。

もし立体感がおかしいと感じたら、またはもっと立体感を強調したい・弱めたいと思ったら、 2-2に戻ってカメラの設定からやり直します。 この時、本プレーヤーに搭載のリアルタイム視差調整表示機能を使うと、どの程度の視差量にすれば良いかのアタリを、再レンダリングする前につける事ができます。



ダウンロード

3ds max8 icon
3ds maxシーンファイル(3ds max 8以降)
7.3MB(ZIP圧縮)
  JPS icon
jpsファイル
447KB

 いかがでしたでしょうか。3D立体コンテンツ制作の一連の流れを駆け足で見てきました。 意外と単純だと思われた方が多いかもしれません。そうなんです。3D立体コンテンツの制作は、普段使い慣れているツールを使って、誰もが簡単にはじめる事ができます。
 今回のテストシーンでは、カメラの設定を一度だけ行いましたが、オリジナルのシーンを制作する場合は、 立体感の作りこみ、及び調整のために複数回の試行錯誤が必要です。これは、3D立体コンテンツのシーンによってカメラ等の最適な設定が異なるためで、 カメラ間の距離やレンズ口径、シーンのスケール(オブジェクトの大きさやカメラからの距離)などはシーン毎に変わってきますし、 最終的な表示サイズ(液晶モニター、数百インチの大型スクリーン、3D印刷等)にあわせた調整が必要になる事が多いためです。 また、演出によっても最適な設定は異なるでしょう。今回のテストシーンでは遠近感を強調したかったため、 カメラのレンズ口径をかなり広角の13mmに設定しています。

 コンテンツが完成したら、2枚の画像を左右に並べて1つのファイルに保存しておくと管理が便利です(サイドバイサイド方式)。また、 左右に並べたjpgファイルは拡張子をjps(Jpegステレオ)にリネームしておくことで、 自動的にサイドバイサイドの3D立体画像としてプレーヤーに認識させる事ができます。
 次回も引き続き3Dコンテンツについて、今度は少し趣向を変えてお届けしたいと思います。
(2009.3.19)

第3回.3D立体写真にチャレンジ

 前回のCGを使用した3D立体コンテンツの作り方に続き、今回はデジタルカメラを使って3D立体写真(ステレオ写真とも呼ばれています)を撮影する方法を見ていきましょう。ステレオ写真撮影のプロや、本格的にステレオ写真に取り組んでいるクリエイターは、カメラを2台用意したり、3D撮影専用の機材を用いて撮影に臨むことが多いですが、ここではお持ちのデジタルカメラ1台で、簡単に3D立体写真を撮る方法を見ていきます。
 今回、この講座掲載にあたり、写真撮影が趣味のこむこむが実際に3D立体写真の撮影にチャレンジしました。その様子をまとめたレポートを公開しますので、ダウンロードしてみて下さい。始めは少し慣れが必要ですが、コツをつかむと気軽に撮影でき、普段何気なく撮るスナップショットを3D立体写真として残しておいたり出来るようになります。
ダウンロード

PDF icon
レポート
877KB
  ZIP icon
使用した写真
13.4MB(ZIP圧縮)
 撮影した写真の視聴に3D立体視聴キットを使用していますが、この講座で紹介しています3D立体コンテンツの作り方は、特にこのキットに限った方法ではなく、二眼視差方式の3D立体視すべてに共通するものです。赤青フィルムのメガネ(アナグリフ)や 3Dシアター(偏光方式のプロジェクター)での上映など、メガネを使用する3D立体表示デバイス全般で有効ですので、ぜひチャレンジしてみて下さい。
 次回はこの点をもう少し詳しく、3D関連のハードウェアやソフトウェア、有益なWebサイトなど、これから3D立体を始めるクリエイターが知っておきたい情報をお届けしたいと思います。
(2009.4.3)

第4回.3Dお役立ち情報

 これまでは主に3D立体コンテンツの作り方を、細かい説明を抜きにして見てきました。 綺麗な立体感を表現するためには、そのシーンや演出意図に合わせた作り込みが重要だが、 基本的には左目用と右目用の2枚の映像を用意するだけで良いという事が分かりました。 これは、3D立体視聴キットを含む多くの3Dハードウェアが、講座第1回でも出てきた二眼視差方式(両眼視差方式)という3Dの方式を用いているからなのですが、二眼視差方式にもいくつかの種類があります。3D立体視聴キットは「液晶シャッター方式」を用いていますが、ここで他にはどんなものがあるか見てみましょう。
視差の分離方式 分離の原理 メガネの有無 使われているシーン
アナグリフ方式 光の性質で分離 使用する 書籍や最近のハリウッド映画のDVD(赤青メガネ)
偏光メガネ方式 イベントや展示会の3Dシアター、家庭用3D液晶モニターの一部 
液晶シャッター方式 時間で分離(時分割) 家庭用3D液晶モニターの一部や3D立体視聴キット
レンチキュラー方式 空間で分離 使用しない メガネのいらない3Dディスプレイ(裸眼ディスプレイ)
パララックスバリア方式
インテグラルフォトグラフィ方式 
ホログラフィ方式

いくつかの方式がありますが、コンテンツの制作は基本的にどの方式でも左右2枚の映像を用意する事で行います。
"基本的に"というのは、メガネを使用しない方式の一部に多眼化された物(視聴する位置によって違った映像を表示する事ができる)や、 メガネを使用する物でもドーム状のシアター設備等では、それぞれ専用のフォーマットでコンテンツを用意するケースがあるからです。 各方式についての解説はここでは割愛しますので、詳細はそれぞれのキーワードで検索してみて下さい。 また、最近のハリウッド3D映画では、これらを改良したREAL D方式、Dolby 3D方式、ColorCode 3-D方式などが用いられているようです。
さて、これまで4回に渡ってお届けしてきた本講座も今回で最終回となります。 これからやってくる3D立体コンテンツの時代に備えて、最後に3D関係のリンク集をお届けしたいと思います。 各カテゴリごとに、これから3Dを始めるクリエイターが知っておきたいサイトを紹介しますので参考にして下さい。 また、掲載順は不同、敬称は省略させて頂きました。

■業界・団体
 3Dコンソーシアム
 立体映像産業推進協議会
 超臨場感コミュニケーション産学官フォーラム(URCF)
 三次元映像のフォーラム
 STEREO CLUB TOKYO
■ハードウェア
 au 3D対応 Wooo携帯 H001
 nVIDIA GEFORCE 3D VISION
 NEWSIGHT 3Dディスプレイ
 VMJ 3D モニター
 VUZIX VR920
 ZALMAN 3D LCDモニター
■ソフトウェア
 Stereo Edit HD
 ステレオムービーメーカー
■放送局
 BS11デジタル 3D放送
■書籍
 次世代メディアクリエータ入門 1.立体映像表現
■3D解説サイト
 STEREOeYe
 ウェルツアニメーションスタジオ 立体視(3-D)映像解説ページ

この情報は2009年4月17日現在のものです。

記事 こさかまさや
(2009.4.17)